オランダでの3年間の教育武者修行を終えた平山直樹(ひらやまなおき)さんにお話を伺いました。

オランダ社会のこと、教育のこと、平山さんのこれからのことを6回に分けてお届けします。

話し手
平山 直樹 / Naoki Hirayama

イエナプランの実践者(イエナプラン教育専門資格 蘭:2019)
日本の中学校で10年間社会科教員を務めた後、教育武者修行のため2016年オランダへ
新婚旅行で6ヶ月のアパラチアントレイルハイクをする根っからの冒険好き
2020年4月より、大阪市にある教育改革中の私立中高に勤務予定

 

聞き手
 佐藤 草 / Sou Satoh

認知科学やインテグラル理論を基にした意識の変容支援の実務家 オランダハーグ在住

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コーヒーブレイク オランダの哲学 ー目的合理主義ー

教員のストライキに参加して、「楽しさの求心力」や「ゆとりの持続可能性」というのも実感じたという平山さん。オランダ社会の根底にある「考え方」についても話してくれました。

「教員」としての実践を積む、オランダの教員養成過程

日本の大学での教員養成システムは、一般的に座学が中心でインプットがとても多いんです。学生たちは先生の話を「聞く」ということで学んでいくスタイル。もちろん、4年間の中で、学んだことを実践する機会(教育実習)は2週間〜3週間はありますけど、それ1回だけ。教員免許は取れるんだけど、実際に教師として働くにはまだまだ距離があるのが現実です。

一方、オランダの教員養成課程は、4年間の中で、計1年間の実習があるんです。日本の15倍以上なので、カリキュラム上で重きを置いているポイントがはっきり違います。基本的にインプットとアウトプットの場が交互にあって、実践(アウトプット)の場があるから、知識(インプット)の吸収率が上がって、次の実践も実りあるものになるという感じです。このインプットとアウトプットを往還させる設計は効果的な学びになると思います。

期間的には、1年生の時は1ヶ月ほど実習があり、それが2年生3年生で段階的に増えていき、4年生では1年のうち6ヶ月間は教育実習に費やします。4年生にもなると、一人で授業をするというのはもちろん、保護者対応、三者面談、成績評価までも実習生がやっていきます。日本では絶対にさせないようなところまで学ぶ機会を与える。これなら卒業後、スムーズに教員が務まるだけじゃなくて、教職の現実を肌で感じて、自分の適性をちゃんと見極めた上で先生になることができる。

教員養成課程が「教員として必要な知識を得る」過程ではなく、「教員として働ける人材を養成する」過程になっているんです。言葉にすると当たり前のようで実際は難しいですよね。僕の身の周りを考えても「目的」と「実際にやっていること」がうまく噛み合ってないことがやっぱりありますから。

小学校の入り口 「良い学びには快適な場所が必要」という考えが敷地全体に反映されている

現代のオランダ社会の中にも哲学的な流れが息づいているんだ!

苫野一徳(とまのいっとく)さんという教育哲学者として日本の教育改革を引っ張っている方がいらっしゃるのですが、この前苫野さんに、「オランダ人はある目的を持ったときにその目的に対してちゃんと合理的に動くんですよね」と話したら、「それは哲学の歴史的な流れを見てもまさにそうなんです。オランダというのは目的合理主義という、目的に対して合理的になる考え方の本家本元なんです。そこはまさにオランダが得意とするところなんですよ」ということを教えてもらって。なるほど、僕がオランダでいろいろ考えたり教えてもらったりしたことって哲学の歴史的に見てもそう言えることなんだ!って、すごく驚きました。あっ、自分の気づきは的外れじゃなかったんだって笑

僕は、3ヶ月のイエナプラン教育研修の中で、合計5校の小中高で実習を経験したんですけど、ほとんどの学校で初日に聞かれるんですよ。「君はここで何を学びたいんだ?何を見たいんだ?何が目的なんだ?」と。そしたら、その僕の「want(目的)」に合わせて実習のプランをアレンジしてくれるんです。もちろん、向こうで多少のことは準備してくれたりするんですけど、あくまでも実習内容は実習生の「want(目的)」から始まるんです。僕が日本で研修に行っていたとき、いきなり「あなたは何を学びたいの?」って講師に聞かれても、なかなか即答では答えらなかったと思うんです。でも、オランダでは、僕は彼らの習性を知っていたので、そういう質問が飛んでくることは予想してて準備万端だったので、いつもこれでもかと答えてました笑

学校内のホワイトボードには各先生の目標やプラン、メンタルの状態も共有されている

オランダ人は合理的な姿勢を人生全体に向ける

オランダに行く前から「オランダ人は合理的だよ」という話は聞いていたんですが、合理的な人というのは計算高い人とか、どこか冷たいイメージを持っていたんですよね。でもオランダに来たら合理的のイメージが変わって、「合理的というのは、ある目的を持ったときに限られた時間や労力やお金を大事なところに的確に注いで、最大限の効果を得ることなんだな」って自分の中で合理的の意味が変わりました。

ここからもう一歩興味深いところのは、オランダ人はこの合理的な姿勢を、人生全体、社会全体に向けているところなんです。たまに、「オランダ人は100点満点で80点取れたら満足する人たちだ」って揶揄する人たちがいるんです。実際、日本人から見ると、お菓子の袋がうまく開かなかったり、サービスにムラがあったり、クオリティ的にもっともっとできるよね‥‥と思うことはあります。

でも、よく考えないといけないのは、日本人から見てクオリティが気になった部分が、生活全体の中で、社会全体の中でどれだけ重要度が高いかというところ。その考えでいくと、オランダ人は、大事なところでは貪欲に100点を目指しているように見えます。合理的なオランダ人たちが、結果として「家族や自分や好きなことを大事に幸せになる生き方」を選び、「人権や教育・福祉が大事にされる社会」を目指していることには、僕はいつも励まされているんです。

「人生全体として、社会全体として何を大切にするか」という問いが色々な取り組みににじみ出ている

オランダで様々なことを体験し、学んだ平山さん。日本に帰って改めて何が見えているのでしょうか。これからどんなことに取り組むのでしょうか。続きはこちら

平山直樹さんの今後の活動予定

2月8日(土)13:00-16:30 @熊本県菊池郡 大津町オークスプラザ

講演会&ワークショップ 「イエナプランに学ぶ ーこれからの教育のゆくえー」
詳細・お申し込みは
こちら

2月24日(月)12:30-15:00 @熊本県八代市 八代ハーモニーホール
講演会&ワークショップ 「踊るイエナプラン(仮題)」

さらに1月下旬から3月上旬の期間で大阪府or京都府・金沢にてイベント実施予定

講演のご依頼・ご相談も受け付けております。
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