オランダでの3年間の教育武者修行を終えた平山直樹(ひらやまなおき)さんにお話を伺いました。

オランダ社会のこと、教育のこと、平山さんのこれからのことを6回に分けてお届けします。

話し手
平山 直樹 / Naoki Hirayama

イエナプランの実践者(イエナプラン教育専門資格 蘭:2019)
日本の中学校で10年間社会科教員を務めた後、教育武者修行のため2016年オランダへ
新婚旅行で6ヶ月のアパラチアントレイルハイクをする根っからの冒険好き
2020年4月より、大阪市にある教育改革中の私立中高に勤務予定

 

聞き手
 佐藤 草 / Sou Satoh

認知科学やインテグラル理論を基にした意識の変容支援の実務家 オランダハーグ在住

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オランダで学んだこと③ オランダ人の「楽しむ力」

協働を通して生まれるもの、変わるもの

ー改めて平山さんがこの3年間、オランダで学んだことは何だったのでしょうか?
日本に帰って来て、自然とやりたくなることっていうのがあって、それは「他の誰かと協働する」ということだったんです。オランダ生活の最後の集大成として、イエナプラン教育を学ぶ3ヶ月間の研修に参加したんですけど、僕も含め12人の研修参加者がいて、彼らと毎日朝から晩まで協働しまくったんですよ。最初は協働もプランニングもうまくできなくて、俺たち協働下手だよね〜って言い合うぐらい苦手意識なんかも持ってたんです。それでも、協働を重ねていったら、なんかだんだん楽しくなっていったんですよね。そして、協働が持つ大きなパワーを感じたんです。協働をすれば、お互いの才能が見つけやすいし、自然と適材適所になるし、何より新しいものを楽しく生み出せる。

12人の関係性も協働を通して変わっていって。ある日の夕食後のフリータイムに、リビングが現代のユートピアみたいになってて笑。YouTubeを流してカラオケを歌ってる人、ウクレレでオリジナルソング歌ってる人、スリッパで卓球する人、デジモンの塗り絵する人、講義の振り返りをする人などがひとつの部屋に混在していたんです。あの光景は、僕ほんと好きで。みんなが自由に自分の好きなことをしている…。昼間の「質の高い学び」から夜の「自分らしい遊び」への変化…。あのダイナミズムは、やっぱり協働を重ねてきたからこそ生まれたと思ってます。もちろん、他人と協働していくのは大変なんですけど、その大変さを越えるパワフルさがあるなと。これが僕の協働への実感で、日本に帰った今も、いろんな人と協働しながら、考えを深めたり、新たな視点を得たり、面白いことを生み出していきたいなと思っています。

平山さんが参加したイエナプラン教育の研修所
「快適な場所でないと良い学びは生まれない」というのがオランダ人教育者の当たり前

がんばることで解決しない、ゆとりがあるから続けられる

それと、これはちょっとちがう話にもなるんですけど、オランダで学んだことに「楽しさの求心力」と「ゆとりの持続可能性」というものがあります。
教師をやっているときは使命感や責任感みたいなものがすごく強かったんです。それが、今は「やりたい」っていう気持ちを推進力にできるようになりました。オランダ人ってホントに気楽にやってるんです。オランダ人の教師たちが務めている学校でも全部が全部うまくいっているわけではないし、学校を立て直すという厳しい状況の中にいるオランダ人たちもいるけれど、彼らはとてもエンジョイしている。エンジョイしながら、ゆとりを持ってやっている。

小学校の職員室 職員室は事務作業をする場ではなくリラックスして職員たちが交流する場

がんばるってことで解決しない。これは僕にとってはすごい魅力的でした。本当に大きなことをやるのって、時間も手間もかかるじゃないですか。3年かけてやるプロジェクトだったら、3年間がんばり続け無理が続いたら、気づいたら仕事以外のことがボロボロになって、最終的には生活や仕事に支障が出てしまいますよね。まあ、こんな言い方してますけど、この働き方こそ、僕自身のこれまでの働き方だったんです笑。オランダ人の働き方を見たら、がんばるということの持続「不」可能な部分をすごく感じて、ゆとりを持ちながら楽しみながらやっていくことの強さを感じたんですよね。こんな姿勢というか雰囲気だったら、いろんな人が楽しそうと思ってジョインしてくれるんだなと。

僕、社会科の教師だからすごい正義感・使命感めいたことを思っちゃうんです。「人権が侵害されている!こんなことを見逃しちゃいけない!」「虐げられている人を見逃しておけるのか!」って。そういう思いは大事だけど、そういう思いだけじゃなかなか人を巻き込めない。言っていることは立派だし大事だと思うけどなんか楽しそうじゃないよね、みたいな。そこは人間の変わらない部分というか、楽しいことがみんな好きですよね。だから、教員たちがすっごいニコニコして家族とも団欒する時間をたっぷり持ちながら、教育現場の難しい問題にわくわくしながらチャレンジしていく感じ。そんな姿勢に「サステナブル」なものと「強さ」を感じました。だから、僕は今、肩の力はすごく抜けているんだけれども、前へ進んでいきたいってワクワクしながら思えるんです。

フードロスという社会問題に取り組む食料廃棄物だけを使ったレストランでの家族とのひとこま
平山さん自身が家族との時間も大事にしながら学びを続けた

オランダ人教師たちのストライキ、その様子はなんと…

一度、すごい貴重なものを見たんです。オランダの小中高の先生たちがストライキをしたんです。

小中高の先生たちがストライキしたらオランダ中の子どもたちが学校に行けないわけですよ。子どもを持つ家庭はそれぞれで子どもの面倒を見ざるを得ないことになるんです。この時点でかなり壮大でしょ笑。僕がちょうどオランダ人の教師の家にホームステイしているときにストライキがあって、「ストライキするぞ、デモもやるぜ!直樹はどうする?」って聞かれて、「そんなの決まってるやん!俺社会科教師だぜ!」って、ノリノリで参加したんです。

それで、どんな感じで訴えてるんだろう、プロテストしてるんだろうと思って会場に入ったら…フェスですフェス笑。5,000人くらいの教師たちがひしめきあってて、ステージの上にはプロのサックス奏者とかDJがいるんですよ。

オランダ人教師たちのストライキの集会の会場 その盛り上がりはフェスさながら

教育問題を訴える「スピーチ」があったり、サックスとDJの演奏を聞いて「フー!」とかみんなで踊りまくる「ダンスタイム」があったり、誰かが作った煽り動画みたいなやつが流れて「そーだそーだー!」とまた盛り上がるんです。そんな感じでとにかく楽しそう。すごい険しい顔をして「これが正しいんだ!」と訴えるという感じではなくて、彼らは訴えることまで楽しんでいたんです。

会場での音楽のパフォーマンス とにかく楽しむのがオランダ流

それでもまだなおオランダ人たちは訴え続ける

ちなみに日本では公立学校の教員がストライキすることは法律で禁じられています。労働者としての基本的な行動の一つであるものを、それを教える立場の教員は法律で禁じられている。オランダではそれがOKで、しかもそれを楽しんでやってるっていうすごい差を僕は感じたんですよね。楽しいことの求心力みたいなのを彼らはよくよく知っていて、そうじゃないとなかなか伝わらないって分かってる。だから楽しみを意識的に入れている。これは、僕の今後の活動の大事な要素になっていくものだと思っています。

これはストライキのエピソードなんですけど、この話にはいろんな大事なものが含まれていると思います。

デモを終えて、帰りながらオランダ人教師に聞きました。「日本の教員の労働環境はひどいけど、訴える教員はそれほど多くない。なんで、オランダの先生たちの環境はすばらしいのに、まだまだ訴え続けるの?」と。すると彼女は答えました。「直樹、それはちがうわ。私たちはずっと訴え続けてきたから今があるの。これは教育者たちがバトンをつなぎながら、勝ち取ってきた結果なのよ」

ストライキの参加者たち 大切なものを守るために、楽しみながら訴え続ける

ゆとりを持ちながら楽しむということ、そしてそれをつないでいくということ…。
ここまで読んできて、あなたはどんなことを感じていますか?

次はオランダの「考え方」の話です。続きはこちら

平山直樹さんの今後の活動予定

2月8日(土)13:00-16:30 @熊本県菊池郡 大津町オークスプラザ

講演会&ワークショップ 「イエナプランに学ぶ ーこれからの教育のゆくえー」
詳細・お申し込みは
こちら

2月24日(月)12:30-15:00 @熊本県八代市 八代ハーモニーホール
講演会&ワークショップ 「踊るイエナプラン(仮題)」

さらに1月下旬から3月上旬の期間で大阪府or京都府・金沢にてイベント実施予定

講演のご依頼・ご相談も受け付けております。
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