2019年10月にICF(International Coaching Federation:国際コーチング連盟)が更新を発表したコア・コンピテンシー(核となる能力要件)モデルには新たに「コーチングマインドを体現している」という項目が登場しました。

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コーチングは相手の学習と成長を後押しする関わりですが、この項目はコーチもしくはコーチングを活用する人自身が自らの学習と成長に向き合い続けていることの重要性を伝えています。

*ICFのコア・コンピテンシー更新について詳しくはこちら

「コーチングマインドを体現している」の中にある8つの詳細項目のうち一つが「実践中のコーチングの振り返り能力を高めることで、自身のコーチングの質を高めている」です。

確かに、コーチングの振り返り能力を高めることはコーチングの質を高めることにつながります。

では実際に「コーチングの振り返り能力」はどのようにしたら高めることができるのでしょうか?

この記事では、コーチングの振り返り能力を高めるための3つの方法をご紹介します。

<こんな方に>
・成長支援の力を高め続けたい
・コーチとして成長を続けたい
・コーチングの質を高め続けたい
・自分らしいコーチングのスタイルを作っていきたい
・決まったスキルを使うのではないコーチングを実践していきたい

1. 振り返りの基準を持つ

コーチングの振り返り能力を高めるためにまず大切なのは「振り返りの基準を持つ」ということです。

毎回のコーチングセッションをやみくもに振り返っていても、コーチングの振り返り能力やコーチングの質の向上にはつながりません。

「何について振り返るのか」を定め、繰り返し振り返りを行うことで、振り返りの精度が上がり、さらにはコーチングの質自体も上がっていきます。

どのような振り返りの基準を持つと良いかは、今、あなたがコーチングにおいてどのようなステージにいるかによって変わってきます。

-①コーチング入門者・コーチングを活用したい方

守破離の「守」、決まった型を身につけていくステージにいる場合、もしくはコーチングをマネジメント等に活用したいという場合、コーチングでよく使われるモデルに照らし合わせて振り返りを行うことがおすすめです。

例えば目標達成のためのコーチングでよく用いられる「GROW」というモデルがあります。

「GROW」とは、
Goal:目標
Reality:現状  / Resource:資源
Options:行動の選択肢
Will:意志
の頭文字を取ったものです。

コーチングを始めて間もないときは細かな質問に意識が向きがちですが、それでは時にクライアント自身に対する注意がおろそかになってしまいます。

モデルの大枠のイメージを掴んでコーチングを行い、実際にどのような流れでコーチングが進んだかを振り返ることで、だんだんと自然にモデルが使えるようになっていきます。

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また、ICFにはPCCマーカーと呼ばれる、ICFのコア・コンピテンシーに基づいたコーチングが行われているかを評価する行動指標があります。

これはICFの資格を取得するための審査の際に用いられるものですが、普段のコーチングの振り返りにも活用することができます。

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*こちらのPCCマーカーは更新される以前のコア・コンピテンシーに沿ったものです。ICF JAPANの発表しているPCCマーカーはこちら

毎回のセッションで全ての項目を満たそうとすると、それこそ機械のようなコーチングになってしまいますが、繰り返し振り返りをすることで自分の癖やパターンを知ることができます。

大切にしたい項目をいくつか定め、意識し、振り返りをすることで型と同じように自然とその項目を満たす関わりができるようになっていきます。

-②コーチング中級者・自分のスタイルを作っていきたい方

守破離の「破」、様々な考え方を学び、自分の型や専門性を作っていくステージにいる場合、もしくは自分らしいコーチングのスタイルを作っていきたい場合には自分なりの振り返りの基準を作ることがおすすめです。

まずは自分がコーチングもしくは成長支援において大切にしたいことを明らかにし、それを実現するために必要なことをリストアップしていきます。

それを元にコーチングの振り返りを行うことで自分がコーチングにおいて大切にしたいことを都度振り返ることができ、自分らしいコーチングのスタイルを作っていくことができます。

また、既存の型や基準を超えて自分なりの基準を作るプロセスそのものも、コーチングの質を高めていくことにつながります。

-③コーチング上級者・さらにバージョンアップをしたい方

さらに守破離の「離」、これまでの経験や考えに捉われずその瞬間に生まれるものと共にあるステージに進んでいきたい場合、セッションで起こったことを題材とし、自分自身についての探究を行うことをおすすめします。

何か決まった基準に照らし合わせるのではなく、そのときそのとき立ち現れてきたものを学びの対象とすることで、自分の中にある積み残しやシャドウと向き合うことができます。

このステージにおいて「振り返りの基準」は、決まった項目ではなく、自分自身の内側やクライアントとの間に起こったこととなります。

これらに関する振り返りを続けることで、自分自身の課題に影響を受けず、直観を活かしたコーチングや成長支援を行うことができるようになります。

2. 「今ここ」への集中力を高める

コーチングにおいて守破離のどのステージにいるとしても、振り返りの能力を高めるために大切なのが「今ここ」に対する集中力を高めることです。

なぜなら、コーチングセッションを振り返るためには、セッションで起こっていたことを認知する必要があるためです。

「一生懸命やっていたけれども気が動転して何が起こっていたか分からない」「セッション中に自分の気がかりに意識が向いていた」というようでは、コーチングの振り返りそのものを行うことができません。

また、コーチングではクライアントからのフィードバックもセッションの振り返りに用いられることが多くありますが、それだけでは振り返りとして十分ではありません。

クライアントがセッションで認識できる気分の変化等はコーチングの効果の一部であって全てではありません。

クライアントは自分自身に関する専門家であっても、コーチングに関する専門家ではありません。

コーチが自分自身のコーチングについて責任を持って振り返るためには今ここに対する集中力を高めるとともに、次の3つの視点を育てることが重要です。

<コーチとして育てたい3つの視点>
①クライアントを観察する視点
②自分自身を観察する視点
③クライアントと自分との関係性を観察する視点

3. 能力を高めるための支援を受ける

さらにコーチングの振り返り能力を高めるためにおすすめなのが、他者からの支援を受けることです。

ハーバード教育大学院カート・フィッシャー教授の研究するダイナミックスキル理論によると、人が発揮する能力は機能レベルと最適レベルの二つのレベルがあるとされています。

機能レベルとは他者からや環境からの支援なしに発揮することができる能力のレベル、最適レベルとは他者や環境からのサポートによって発揮することができる能力のレベルを指しています。

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最適レベルは機能レベルよりも高く、年齢を重ねるごとに、また、より高度な能力を獲得するためには他者からの支援に基づいて最適レベルを発揮していく実践を行うことが重要になってきます。

自分自身の成長のためにコーチをつけることはもちろんですが、コーチングの質を高めるためのメンターコーチをつけ、コーチングセッションの振り返りを一緒に行うことでコーチングの振り返り能力を高めていくことができます。

コーチングセッションの振り返りの方法についてはこちらの記事でも詳しくご紹介しています▼