オフィスワークからリモートワーク(在宅ワーク)に切り替えて2週間くらい経ったという方も多いのではないでしょうか。

実際に家で仕事をしてみてどうですか?

「思ったようにはかどらないなあ」という方もいれば「何だ、オフィスっていらなかったじゃん」と感じている方もいるかもしれません。

私はコーチとして色々な方とお話をする機会がありますが、現在の状況に関わらず、独立や起業などで働く環境が変わったというときにリモートワークになってパフォーマンスが上がる・上がらないというどちらの事例にも出会ってきました。

また、私自身が6年前にフリーランスになってから日本でも海外でも自宅やホテル・シェアオフィス・コワーキングスペースなど様々な環境で仕事をしてきましたが、その中でパフォーマンスが上がることもあればそうでないこともあるということを実感しています。

今日はそんな経験から、
・リモートワークでパフォーマンスが上がらないのはなぜか
・リモートワークでパフォーマンスが上がるポイント
・他者のパフォーマンスを上げるために大切な視点
をご紹介していきたいと思います。

<こんな方に>
・リモートワークで何となくパフォーマンスが上がらない方
・リモートワークをしている部下やチームメンバーのパフォーマンスを上げたい方
・どんな環境でも自分が持っている力を思いっきり発揮したい方
・管理職や人事、教育など人の能力開発に携わっている方

1. まずは現在の状態を見つめてみよう

まずは、実際に「オフィスワークから在宅ワークに切り替わった」という方、ご自身の現在のパフォーマンスはいかがですか?

あなたが十分にパフォーマンスを発揮できているときを10点とすると、オフィスワークだったときのパフォーマンスは何点くらいで、在宅ワークでのパフォーマンスは何点くらいでしょうか?

次に、その点数の理由を考えてみましょう。

その際のポイントは、「プラスの要素もマイナスの要素も考えてみる」ということです。

例えば今のパフォーマンスが「1点」だとしても、ダメな理由だけでなく「1点分は何ができているということなのか」を考えてみてください。

そしてさらに、その「プラスの要素とマイナスの要素を生み出しているさらなる要因」もそれぞれ考えてみましょう。

例えば…
・企画書の質が上がっている 要因:一人で集中する時間を取ることができている
・プロジェクトを進めるスピードが落ちている 要因:チームメンバーや多部署とのコミュニケーションが取りづらい

と言った感じでしょうか。

「パフォーマンスが上がって欲しい」というチームメンバーや部下がいるのであれば、その人のことを想像してみてください。

2. 私たちのパフォーマンスに影響を与えるもの

では次に、「私たちのパフォーマンスに影響を与えるものが何か」を考えてみましょう。

そのために、インテグラル理論で使われている4象限の考え方を用います。

インテグラル理論というのはアメリカの思想家のケン・ウィルバーが提唱する「世界の捉え方や変化の仕方」に関する考え方です。

個・集合、内・外の2つの軸を用いて4つの象限で世界を捉えることで、「1つの出来事が、何に起因して起こっているのか」や「課題にどんな対処をすれば良いのか」について様々な選択肢を検討することができます。

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参考:『インテグラル・シンキング 統合的思考のためのフレームワーク』鈴木規夫著

これを、「私たちのパフォーマンスに影響を与えるもの」にあてはめてみましょう。

「パフォーマンス」を「アウトプットするものの質」と言い換えると、アウトプットするものの多くは目に見える(右側の象限)ものですが、それに影響を与えるのは、目に見える要素だけではありません。

ここに書かれているもの以外にも、きっとまだまだ私たちのパフォーマンスに影響を与えているものはあると思います。さらにこれらはそれぞれに影響を与え合っています。

改めて、今のあなたのパフォーマンスに影響を与えているものは何でしょうか?

そして「パフォーマンスが上がっていない人」に影響を与えているものは何だと思いますか?

3. 見落とされがちな「働く環境」

私たちのパフォーマンスを上げるためには、先ほどご紹介した4つの象限を元に、それぞれの領域の状況・状態を整え、より良い状態にしていくことが必要になります。

特に働く環境については、オフィスと自宅では大きな違いがあります。

私も、フリーランスになって始めに感じたのは「オフィスは仕事をするのに快適な場所だったんだな」ということです。

中でも大きな違いを感じるのは椅子。

最近は手頃な価格で利用できるシェアオフィスやコワーキンングスペースも増えていますが、椅子の座り心地や長時間座ったときの疲労度合いはワーキングチェアと普通の椅子では全く違います。

「何となく集中できない」というのは椅子や机、空調、音、そして周囲の人など、様々な要素がかけ合わさって起こっています。

「オフィスに行くのって何だか面倒だなあ」と思っていたけれど、オフィスってやっぱり「働くのに快適な物理的な環境」が整っていたんですよね。

オフィスの役割は仕事のパフォーマンスを上げるための物理的環境をつくることと、関係性の環境をつくることです。

もしオフィスと家を比べて、「環境としての快適さは変わらない」というのであれば、そのオフィスは機能の半分を果たせていないのではと思います。

というわけで、もしあなたが「家では集中できないな」「なかなかパフォーマンスが上がらないな」と思っていてもそれはとても自然なことです。

周りにいる人のモードが全然違ったり、自分の心や身体の状態が違えば、なおのこと。「いつもと同じパフォーマンス」なんて出せたものではありません。

そんな中では、リモートワークにするだけでなく、働く時間の長さ自体を変えたり、力を入れることを変えたりといった工夫も必要になってきます。

4. 「あの人は能力が低い」は本当ですか?

また、こんな時、特に注意をしたいのは私たちの認知のバイアス(偏り)です。

脳研究者の池谷裕二さんは私たちの脳の性質の一つである「根本的な帰属の誤り(Fundamental Attribution Error)」を次のように紹介しています。

脳は、他人の行動や言動を、その人の性格に由来すると捉える傾向があります。(中略)この判断癖は強烈で、明らかに外的な影響を受けての行動であっても「あの人はそういう人だから」と、性格に結びつけて考える傾向があります。
たとえば、誰かが不可抗力で花瓶を落として割ってしまった場合でも「不注意な人だな」と感じがちです。ところが不思議なことに、自分が花瓶を割ってしまった場合は「私は不注意だ」とは考えず「机の端にあったから」と責任を転嫁します。

つまり、他人の発言や行動は当人の内的要因に帰属させる一方で、自分については外的要因に帰属させる傾向があるのです。

ー『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版 本当の自分を知る練習問題80』 池谷裕二著

まさに先ほど環境(外部要因)の話を強調して紹介したところでしたが笑

「他人のことは当人の内部要因に帰属させ、自分については外部要因に帰属させるという傾向がある」というのは、実際に自分についても、組織の中でもよく起こっていると感じます。

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もちろん個々の能力開発というのは大事ですが、

「自分や他者のパフォーマンスには様々なものが影響を与えている。自分はそれを見渡せているだろうか。様々な可能性を検討し、改善策を考えることができているだろうか」

と考えることが重要です。

5. 「これからの世界」を見据えるにあたって

たとえ、現在のコロナウイルスによる危機を乗り越えられたとしても、この先、いつまた同じようなことが起こるか分かりません。

現在、「オフィスがある必要性というのはある」という認識が強まっている一方で、「いらないものもある」ということも明らかになってきています。

働く場所や組織の形、仕事の内容が変わっていくことは必然的な流れだと考えられます。

そんな中で特に管理職や人材育成、教育などに携わる方は、これまでは

「環境や関係性といった共同体としての土台があった上で、個人と組織のパフォーマンスを向上させることを支援していた」

というところから、これからは

「環境がそれぞれに違い、関係性も見えづらい中で個人と組織のパフォーマンスを向上させることを支援する」

というように役割が大きくシフトしていくことになるでしょう。

いずれにせよ、世界は変わり続けます。まずは「自分はどんな前提を持った世界に身を置いていたのか」ということに目を向けてみると、「限界と思っていたものの先」が見えてくるかもしれません。

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