20230218 猫再び
気がついたら猫がいた。
この感覚はデジャブである。
ニカラグアの火山湖のほとりに暮らしていたとき、ある夜、突然猫がやってきた。
オーナーが10年以上前に面倒を見ていた猫だったそうだが、その猫が、ある日突然、枕元ならぬ足元に立っていた。
何日かわたしたちの様子を見ていて、動物好きだと思ったのでやってきたのだろう、なんてことを話していた。
そして昨晩、ベッドで動画を見ていて、ふと顔を上げると目の前の棚の上に猫がいた。
部屋の扉はどこも開いていないはずなのに、とビックリしたが、もうこれがわたしと猫との出会い方なのだと開き直った。
ゆっくりと話しかけながら近づき、手を差し出し、そして頭を撫でる。
なめらかな毛並み。ゴロゴロと喉を鳴らす。普段きっと誰かに世話をされているのだろう。
ベッドの一角にタオルを敷き、抱き上げてタオルの上に乗せると、猫はあっという間にくつろぎ、半分口を開けて寝始めた。
この警戒心のなさは何なのだろう。
よっぽどこの部屋に慣れているのか、よっぽどわたしから猫好きの匂いを感じるのか、よっぽど目の前のことに集中しているのか。とにかく、見習いたくなる恐れのなさである。
このまま部屋にいてもらっても一向に構わないけれど、トイレだけは外でしてもらわないとなあ、なんてことを考えていたら、案の定しばらくして猫はすくっと立ち上がり、ベッドを降りて部屋を嗅ぎ周りながら歩き、リビングスペースに敷いてあるマットの上で爪研ぎのような動作を始めた。
あれはトイレの準備だ。そう思って急いで駆け寄り抱き上げる。どこに行ってもらうのがいいだろうかと思いながら、バルコニーに続く扉を開ける。その間、猫は全く抵抗する様子もなくわたしの手の中にだらりと抱かれている。バルコニーの床に猫を下ろすと、猫は歩いてバルコニーの端まで行き、隣の家の屋根に移った。
トイレが終わったら帰ってくるかな、などと思いながらベッドの上のタオルをそのままに
しておいたが、結局猫は戻ってこなかった。
警戒心もなければ、執着もない。
ただただやってくる状況を受け入れていく。
飄々とした猫の様子を、朝、雨の音と鳥の声の中で目覚めた意識の中でも思い出していた。
2023.2.18 6:41 Ubud