946. 食べて、笑って、散歩して

 

久しぶりに、日記を書いている。それがもうどのくらい久しぶりなのかさえ分からない。と言っても、一週間やそこそこだろうけれど、もっと、随分と長い時間を過ごしているように思う。

歳を取っていくとともに、「あっという間」に時が過ぎていくようになるのは当たり前だと思っていた。一日が、一週間が、一ヶ月が、一年が。

東京の企業に転職して一年が過ぎようとする秋の日、ふらりと訪れた神社の境内で、大きな銀杏の木が黄色い葉っぱをつけて輝いている様子を見て、季節の変化に気づかないまま毎日を過ごしていた自分がいたことに気づいた。

企業から離れて、欧州に来て、毎日を味わっていると思っていた。それでも、それはまだほんの一部だったのだと今になって分かる。

自然の巡りがあって、その中に暮らしがあって、大切な人と今日という日を楽しむ時間があって、大切なことを深める時間があって、空間はともにしていないけれど、ともに時間を過ごす人と向き合う時間がある。

そうやって過ごしていたら、毎日はとてもゆっくりで、一日の中で感じること、気づくことが本当にたくさんある。

今美しいと感じるのは、それらの気づきが現実や現前、他者との間から生まれているということだ。一人で自分自身と向き合う時間、そして先人たちの積み上げてきたものから学ぶ時間も大切なものだった。それでも、あえて「命の輝き」という視点から見るのであれば、今ここにある現実、わたし、そしてあなたから学ぶということ、深めあうということは何にも代えがたい尊さがあるのではないかと感じている。

「今日あなたは何か新しいことを学びましたか?」

いつも日本語の勉強をしている彼に、日本語についての話を聞いたつもりだった。

「今日はあなたが喜ぶことをまた一つ学んだよ。それと、クリエイティブなパンケーキの作り方」

そんな答えを聞いて、生きるために必要なことや、今日という一日を楽しむために必要なこと、大切な人と笑顔で過ごすために必要なことは教科書には書かれていないのだと分かった。

この1週間、あたらしい暮らしのリズムを試してみる中で上手くいかないこともたくさんあった。一人でやりたいことだけをして暮らすというのは、孤独とともにいる力や自分を律する力が必要で、それはそれで楽なだけではないけれど、でも、やっぱりとても楽だったと思う。

自転車の荷台に座りビーチまで行き、散歩をし、料理をし、ごはんを食べて、デザートをつくりほうばる。それがオランダらしい暮らし方・生き方なのかは分からないけれど、とにかくこの国でようやく始まった新しい暮らしは、これまでここで過ごしてき2年半とは全くもって違うものだ。

そんな暮らしの中で、これまで通りではなくなることもあるかもしれない。この一週間がそうだったように、これからも色々なことを試していくことになるだろう。日々の中で楽しみと試みを繰り返していくこと。それが今学んでいる、人生への向き合い方だ。2021.1.11 Mon 9:33 Den Haag