945. 今日の暮らしを生きる


リビングでパソコンを開き、メールのチェックなどをしていると、寝室の扉が開いた。「今日のセッションは何時からか」と聞いてくる声がする。今日の予定は8時半からだけど、セッションではなくミーティングで、リビングを使うから大丈夫だよと返事をするも、伝えたいニュアンスを英語で表現することができない。

現在のハーグの日の出の時間は9時頃。8時半でもまだまだ暗くて、周囲の家の窓に灯る電気もまばらだ。オランダはもともと在宅で働く人や週3日、4日などで働く人も多いと聞く。さらに、欧州の中では睡眠時間が長い方だとも聞く。そのためかは分からないが、年をとっても比較的元気な人が多い(はずだ)。

気づけば、日本にいた頃のようにたくさん仕事をするようになっていた。仕事といっても、通勤もないし、外で飲むこともほとんどないし、いわゆる「人間関係」もほとんどなくて、心身の負担はかなり小さい。だからこそ、いつまでも「勉強」や「準備」ができてしまう。

昨年の今頃は今よりもいわゆる「仕事」は少なかったけれど、今の時期にどのくらいの時刻に日が昇って、何をしていたかを覚えていないということはきっと暗い中で起き出してあれやこれやをしていたのだろう。来週には少しスケジュールにゆとりができるので、昨年のこの時期の日記を読み返してみたい。

学ぶこと、実践すること、広げること、深めること。ここ2年間の取り組みが今の自分と今の暮らしを作ってくれていることは間違いない。懸命に取り組んでいなければオランダで暮らし続けることもできなかったかもしれないとも思う。

そうしているうちに、明らかに、人生のステージが変わった。新しい出会いもあった。そして今、毎日の暮らしが大きく変わりつつある。

これまでやってきたことを変えようとするとき、ともすれば「これまでやってきたこと」を否定するような気持ちになってそこから離れ難くもなるけれど、結局のところ「変わっていっている」だけなのだ。これまでの生き方・暮らし方を否定するわけでも、それらの価値が下がるわけでもない。ただ、変わった、ということ。

変わった先には、これまでの自分の心が憧れ、望んでいたことがたくさん詰まっている。日々の暮らしの中で「実践」を行い、日々の暮らしの中で感じることを大切にする。

今日食べるものを、自分の手を使って、少しでも美味しく、楽しく食べられるようにする。暮らしの場をととのえる。目の前の人と「今ここ」で感じていることを交わす。

幸せとはこんなシンプルなものだったのだと思うけれど、それもきっと、これまでの時間があったからこそそう思えるのだろう。

一生懸命学んで、働いて、物質的に満たされて、色々な景色を見て

そんな中、例えばあの頃に埋まらなかったただ一つのピースが埋まっていたら、どのくらい幸せだったのだろう。今となっては分からないけれど、今は「足るを知る」ことの大切さを味わっている。それもきっと、人生の時間の積み重ねの先に出会う感覚なのだろう。これまで過ごしてきた時間の全てが尊くてかけがえがない。

大変なこと、辛いこともたくさんあったけれど、それでも過ごしてきた時間、ともに過ごした人に感謝をしたいとやっと思えるようになってきた。

仕事においては先の予定をあれこれ考えているけれど、今日という日をどう生きようか、今感じていることをどうやって伝えようかということを大切にしてここにある時間を過ごしていきたい。2021.1.8 Fri 8:05 Den Haag