930. 手入れをすること、暮らすこと

 

パソコンを持って書斎にやってくると、中庭を挟んで斜め向かいの家の窓枠を手入れしている人たちが目に入った。先ほどから何やら機械音がしていたがこの音だったのか。白く塗られた木の窓枠に電気のやすりをかけている。おそらくこのあと、ペンキを塗り直すのだろう。

この国の人たちの家に対する態度というのは「好きだなあ」と思うことが多くある。自分でできる手入れは自分で行い、ペンキの塗り直しなどは年に一度くらい、専門の業者が行う。表の通りに面した窓はおそらく1ヶ月から2ヶ月に一度、清掃されている。

家の手入れをしている人は私から見ると大抵機嫌良く作業をしていて、口笛を吹いたり、音楽をかけたりしている。目が合うと笑顔で声をかけてくれる。

日本では、例えばお風呂場であれば今はユニットバスを入れることがほとんどなので、タイルを貼ることのできる職人さんが減っていると聞く。手入れをすることよりも新しいものに変えることが、家のことに限らず重視されているのではないかと思う。それは、暮らしと仕事を切り離すような、そんな構造を助長しているのではないだろうか。朝から晩まで働き、外食をし、ジムに行き、その間にお掃除ロボットで家の中を掃除する。一見便利なように思えることが、実は人間を生産機械の一部のような存在にしているのではないだろうか。

生きることの中心に暮らしがあり、その中で深めていることの中で他の人の役に立つことが仕事になっている。そんな生き方が理想ではあるものの、かくいう私も暮らしらしい部分というのはあまりないのかもしれない。それでも、中庭の木々を眺め、のんびりとお茶を飲むという時間がまず今は大事な時間になっている。

こうして日記を書きながらなんとなく浮ついた意識があることを感じる。それは明日、これまでとは違う形の勉強会を行うためだろう。

昨日も朝7時半から勉強会を開催したため、夕方過ぎにはもう日記を書いたり深く思考をするエネルギーが残っておらず、身体的な感覚だけで進められる作業に取り組んでいた。

今月・来月と新しいことに取り組むのでこんな感じの毎日が続くだろう。できれば年末年始をあたたかいところ、例えば台湾などで過ごしたいなあと思っていたが、現在の状況を考えると、そしてオランダでの個人事業主のビザの更新手続き中であることを考えるとオランダから出ることは難しいだろう。現在のオランダのビザは1220日が有効期限となっている。すでにビザ更新のために必要な申請は行なっているので、あとは返事を待つだけだ。1220日までにビザが更新されずとも、一時的な延長の手続きを取ることができる。しかしそれには移民局の予約が必要なため12月に入ったら移民局の予約状況をウォッチして、必要なタイミングで予約を入れなければならない。

2年前に申請を行った際もなかなか返事が来ず、一時的な滞在許可の延長の手続きを行ったが、その数日後に正式なビザが降りると連絡が来た。それでもまだ、ビザが降りるだけありがたいだろう。

先日、今年からオランダでは個人事業主のビザを取得している人の配偶者は雇用されることができるようになったという記事を目にした。それによって、オランダに移住する日本人などはより安定的な収入を得られるようになるだろう。この寛容な国が今後どんな風になっていくのかというのはなかなか興味深い。

「来年こそはもっとオランダのことを知ろう」という、毎年持ってきたおぼろげな気持ちは来年こそは叶えられるだろうか。

同時に、日本のことをこれまでとは違った視点で見てみたいという感覚も湧いてきている。できれば来年の春には日本に行き、色々なところに滞在したい。金沢、松江、萩など、今滞在したいところは主に日本海側だ。瀬戸内海周辺、もしくはどこかの島でもいいかもしれない。今後日本での拠点となるような静かな場所を探したい。そして何より、できれば一対一で、何人かの人たちと静かにお茶を飲んで語らいたい。2020.11.27 Fri 10:13 Den Haag