921. 肌荒れと自然のリズム

 

バラバラと広がって飛ぶカモメたちの姿を見て、「無音映画みたいだ」と思った。耳を澄ますと鳥たちの声が浮かび上がってくる。音を感じると、一気に世界が立体的になる。音のない景色は平面の絵のように見える。

三週間ほど前から症状が出始めた頬の肌荒れがやっと心なしか落ち着いてきた。と言ってもまだ万全の状態からは程遠く、手で触れずとも乾燥して肌が硬くなっていることが分かる。

先日、オンラインのスキンケア講座で教えてもらったようにシャワーから出るお湯を直接かけなくなったことが効いているのだろうか。朝一番、シャワーを浴びた後はいつもとてもひりひりとした感覚を感じていたが、肌の弱くなっている部分に思いっきりシャワーから出る湯を当てていたというのは(水圧はさほど強くないにしろ)今思えば「ごめんなさい」という感じだ。

肌荒れの原因はおそらく、最近ようやくスーパーなどの店に入るときにつけるようになったマスクだ。しっかりとした生地のものを使っていたが、どうやらそれが肌を擦るとともに、マスク内を蒸らし、マスクを取ったときに一気に肌の水分が蒸発するということが起きていたようだ。先日注文した加湿器も今日届くようなので水分を摂ることと合わせて、室内の環境もととのえたい。

それにしても、いわゆるファンデーションと呼ばれるものはもう5年以上使っておらず、欧州に渡ってからも多少の手荒れが起きたことはあったものの顔の肌はすこぶる良い状態を保ってきたが、それがあっという間に状態が崩れ、かつ何週間も元に戻らないというのはなかなか興味深い。

良い状態になるのは時間がかかっても、良い状態が崩れることはあっという間に起こる。

しかし。もしかしたらあっという間に崩れるというのはそもそも土台が脆弱だったのかもしれない。

心の状態などを見ても分かるが、日々の小さな習慣を積み重ねているかが土台の強さやしなやかさを作るのだろう。

そして同時に思うのは純粋培養のようなものも、普段とは違う刺激があるとあっという間に崩れる可能性があるということだ。無菌室で暮らしていた人がいきなり都会に出たらきっと大変なことになるだろう。

環境への適応力や強さを見につけていくためにはある程度の刺激というかストレスのようなものも必要だと思うが、あまりに刺激やストレスが大きいとそれに対応することにエネルギーを奪われて、日々疲れ果てながら過ごすということになってしまう。

こうして書きながら、やはり人間や自然にはリズムのようなものがあるのだという気がしてくる。一日の中でのリズム、一年間の中でのリズム、人生の中でのリズム。その中で、ゆるやかに、大きく自分を振っていくことで、自然な免疫力というのか自然治癒力のようなものも上がり、そして持っている力も発揮されていくのだろう。

先ほどから、庭のガーデンハウスの上で子猫が丸まっている。向かいの家のリッタローだ。木を見上げ庭を見回す。あんな風に丸まっているのなら家の中にいればいいだろうにと思うけれど、猫にとって丸まるのは寒いからではないのだろうか。私だったら冬の間は家の中でぬくぬくとほとんど動かず過ごすかもしれないが、庭に出てくる猫たちを見る限り、どんなに家の中があたたかくても外に出たいときというのがあるようだ。

それにしてもあの猫はあっという間に大きくなっていっている。どうしたら我が家まで遊びにきてくれるか、もっと真剣に考えてみようか。一度でいいから、猫の目で世界を見てみたいものだ。2020.11.18 Wed 8:22 Den Haag