900. 節目を迎えて

 

随分と早く目が覚めた。いや、結局のところ眠りにつけなかったと言ってもいいだろう。


真っ暗な中、リビングに向かい、パソコンを開く。昨晩開いておいたページをリロードすると、「合格発表」の文字が現れる。メールを開いている別のタブで「受験番号」と検索する。そしてまた元のタブに戻り、「合格発表」の文字をクリックする。

一番上の段に確認したばかりの受験番号を見つける。

良かった。

ホッとするとともに、何か背筋が伸びるような気持ちになってくる。

合格発表を前にどきどきしていたというのはいつぶりだろう。もしかしすると大学受験のとき以来かもしれない。

新卒で入社した会社では宅建の受験および取得が必須となっていたが、試験が終わってすぐに自己採点ができるので合格発表をドキドキして待つということはなかったように思う。確か二度目の受験のときはその年の合格ラインに1点足りなかったのだが、受験が終わってすぐにずっと欲しかった仕事用の鞄を「頑張りました」のご褒美として購入していたので、合格発表の際にはもう合格でも不合格でもどちらでも良いという気持ちになっていた。

今回も実際のところ、試験に合格したからと言って何かが変わるわけではない。コーチングについての資格は日本では民間資格しかなく(フランスでは国から職業認定をされる資格があるらしい)、国際資格を取ったところでそれがないとできないことがあるわけではない。

しかも今回の試験は国際資格の受験のために必要なプログラムを修了しているという認定の試験だ。その認定試験の中で実技試験等を終えているため、このあとは申請さえすれば国際資格にもほぼ合格することになるだろうけれど(このあとにもう一つ試験があるがそれは何回でも受験可能なものだ)まだ完全に試験が終わったというわけではない。

それでも、プログラム修了認定の試験は年に1回しか開催されておらず、今回を逃すとまた1年後ということになるので、今回合格することができて本当にホッとしている。コーチングセッションの書き起こしや自己採点、フィードバックを受けることなど一連の準備に半年以上かけてきてその手間はとても大きかったし、何よりも「結果を待つ」ということに無意識に使うエネルギーの大きさを実感している。

今はWeb上で受けることのできる試験であればすぐに結果が分かるだろうし、そうでないものでも特に選択式(マークシート式)のものであれば1ヶ月くらいで結果が発表されるのではないだろうか。

2ヶ月という時間が途方もなく感じたのは、それだけ自分が「待つ」ということを普段しなくなっているからかもしれない。

こうして考えるとインスタントなテキストのやりとりや関係性の結び方、物事の進め方にいかに慣れてしまっているかが分かる。

小さな頃はゆっくりと成長していく様子を見守っていたのが、いつしか気づけば「決まったインプットをすれば決まったアウトプットがされる」という意識で人を見るようになっている。

ちょうど昨日、フランスでは運転免許を取るのに、家族などに同伴してもらって運転する経験をある程度積むと正式な運転免許が取得できるという制度があるということを読んだ。ある程度と言っても、1年以上、何千キロかの走行距離が必要になるそうだ。取得するのに時間と手間はかかるが、この方法で運転免許を取った人の方が事故率が低いのだということを知り、良い制度だなと思った。

日本がどうかは知らないが、カウンセラーやセラピストは必ず自分がカウンセリングやセラピーを受け続けることが義務付けられている国もあると聞いた。人と向き合うというのは本当に注意が必要な仕事で、それ故、自分自身と向き合い続ける必要もあるし、しっかりとした倫理観を持っておく必要もある。

それがことコーチングとなると、自分がコーチングを受けたことがなかったり、学習者同士のコーチングで資格が取れてしまったりするということもあり(あくまで民間資格なのでやはりそれ自体が大きな意味を持つわけではないが)コーチ側もコーチを活用する側も注意が必要である。

国際資格を取れば、更新のために嫌が応でも一定のトレーニングを受け続けることが必要になるため、自分が何か「これだ」というものに固執したり固着しないでいられるだろうこともあり今回の受験を決めたため、合格自体が目的ではないが、それでもやはり合格というのは嬉しいし、できれば今後こんな大変な試験は受けたくないものだと思う。

これからは何か大きな区切りに向けてというよりも、日々粛々と、なすべきこと、与えられたことに取り組んでいきたい。

資格を取ろうが取るまいがやることは変わらないが、自分の中でどこか「宙ぶらりん」な感覚があったことは確かだ。ここからはいくつかの計画していることを確実に進めてもいきたい。

そんなやる気が出ているせいかすっかり目が覚めて早朝から家具の配置換えまで行なってしまった。日中の過ごし方、そして睡眠の質をより良いものしていけば、自然とアウトプットされるものの質も上がっていくだろう。表面に見えるものや結果をどうにかしようとするのではなく、それをなしている自分自身をととのえていく。そんなことを続けていたら大切なことに取り組み、実現をすることができている毎日を送ることができるだろう。

もうすぐ友人たちが日本から欧州やオランダを訪ねてくることが途絶えて1年が経つ。来年の春には日本を訪れることができるだろうか。オランダのこの時期の天気を考えると、来年からは10月頃は日本を訪れる時期にしたいとも思う。

ものごとが一つの区切りを迎え、気持ちも新たなステージに向かっている。2020.10.28 Wed 7:45 Den Haag