876. コーチングファームを舞台にした怖い夢

 

すっかり日は昇り、明るさが部屋を包んでいる。つい2時間ほど前には真っ暗だった部屋だ。

今朝は怖い夢を見た。そして、「怖い夢を見た」と思いながら目覚めた。

珍しく、夢で見たことの多くが記憶に残っている。

夢の中で私はかつて勤めていたコーチングファームのオフィスにいた。今の自分に近い状態で、再入社をすることにしたようだ。オフィスには知った人もいたし、そうでない人もいた。「会社が大きくなっているんだなあ」というようなことを考えながらオフィスを見回していると、大きなホワイトボードが目に留まった。

その向こう側はコーチング用の電話ブースが並んでいるエリアになっていいて、ホワイトボードにはブースの利用状況を示すマグネットが貼ってある。マグネットには使用者の名前が書いてあるが、その横にさらにアルファベッドのついたマグネットが貼ってあり、それが、チーム名を示しているもので、どのチームがどのエリアのブースを使うかも振り分けられているということが分かる。

そんなことを考える私の周りには「わちゃわちゃ」と言っていいくらいたくさんの人がいる。その中に元同僚の男性を見つけ声を掛ける。「今って法人向けのプログラムはどういう仕組みになっているんですか?」「1対1のコーチはつきますか?」などと言ったことを同僚に聞く私はどうやら自分が11のコーチングを受け持つことになりそうかが気になっているようだ。案の定「私今、20人以上クライアントさんがいてこれ以上ご一緒することは難しそうで」ということを口にする。そんな自分を見て、「ああこれは、現実世界で意識が向いていることが夢になっているんだなあ」と思う自分もいる。

そうこうしているうちに、オフィスの壁にかけてある学校にあるような大きな丸いアナログ時計が2時半を指していることに気づく。「3時からのセッションに向けて準備を始めないと」「あれ、このオフィスの中で発声練習をしていいものだろうか」ということがぐるぐると頭に浮かぶ。とりあえず電話ができるブースを確保しないととホワイトボードを見回すも、ブースの予約が埋まっていて焦る気持ちが高まってくる。

ちょうど目の前を中高の同級生の友人が通りかかったため「Nちゃん、ブースって他の場所にもある?」と聞いてみると、彼女は「あるよ」と答え、案内をするためにオフィスの中を歩き始める。これまでいた部屋を出ると、学校の廊下のような通路が伸びていて、友人はそこを歩き続ける。友人の後をついていきながら通路沿いにある扉の開いている部屋にチラリと視線を向けると、元同僚の女性の一人の後ろ姿が見える。「やっぱり頭の中にあることが夢に現れているんだなあ」と思いながら友人の後をついていくと、友人は通路の脇にある階段に足を進め、一つ上の階に向かう。上の階に着き、「ここは以前使っていたブースのある部屋だ」と案内された部屋を覗き込んで驚いた。

壁一面、黒板のような深緑色のペンキが塗られ、さらにその上に白いペンキで書かれた落書きのような文字が広がっている。内容をハッキリと追うことはできないが、そこには誰かの、恨みにも近い、「伝えられなかった想い」のようなものが込められている感じがして、身体が冷たい感覚を感じる。隣の部屋も同じように、深緑色のペンキが塗られた壁に呪文のように白い文字が書き連ねてあり、ぞっとした。一刻も早くその場を離れたくて、「ここはとてもじゃないけど、セッションができる環境じゃない」ということを案内をしてくれた友人に告げて部屋を出て、転がるように階段を降りた。

心地悪い感覚を抱えながら元いたオフィススペースに戻ると時計の針はすでに240分を過ぎていて、さらに気持ちが焦ったところで目が覚めた。

目覚めてしばらく「怖い夢を見た」という感覚の中にいた。「焦った夢」ではなく、「怖い夢」だ。

人でごったがえしたオフィスも、深緑色に塗られた部屋も、そこにかかれた怨念のような文字たちも、全部自分の内側にあるものなのだろう。目覚めたときに感じ、今も微かに残っている「怖さ」は、私自身の中にあるものに対して私が感じていることということになる。

見てはいけない、底のない淵を覗いてしまったような感覚だ。
しかしそこには何かがあるのだろう。
この先は足を踏み入れてはいけない場所なのか。

また一つ、心の奥の小さな扉を開けるときが近づいているのかもしれない。2020.10.2 Fri 10:34 Den Haag