601. ゆっくりと、足早に、巡る春

にわかに強い風が吹いて、斜めに開いている書斎の窓がバタンと閉まった。風の音がするのと窓が閉まるのはほぼ同時だったが私の中では、風が吹いたので窓が閉まるという関係性の公式が成り立っていることに気づく。

庭の梨の木の花は半分くらいが開こうとしているのだろうか。まだ咲ききっているわけではない。あの花は、桜よりもゆっくりと開き、散っていくのかもしれない。

数日前にスーパーに行ったときに、いつも通っている住宅街の角を曲がるとそこにある景色に驚いた。歩道の脇にある木に花が咲き、そしてすでに地面に花びらが散っていたのだ。数日間通らない間にあっという間に春の風が吹きさって行こうとしているようなそんな光景だった。

実際のところ、まだ気温はあたたかいときでも10度を上回る程度で、寒がりの私としては真冬用の上着は手放せないけれど、たとえば晴れた日に家の中に日が差してくると、その場所は温室のようになる。明らかに冬の間とは違う、雲を通さない直射日光が差してきている。

シュンゲンエリアへの入国規制が始まり、日本も欧州から来た人には2週間の自主待機を求めているということだが、そういった世界の状況を脇に置くと、オランダでの日々は至って静かで穏やかだ。

 

昨日、宅配業者が来たときに上の階に住む男性と話をした。聞けば小学校のオランダ語の先生だそうで、学校が休校になって大変だという。このままだと夏休みまでずっと学校は休校かもしれないと顔を曇らせる。いくらインターネットが発達しているからと言ってもそれはまだ公共のインフラのように誰しもが同じ環境で活用できるものでもなく、また同時に特に小さい頃の学びというのは身体的な要素の重要性も大きく、簡単にオンラインに置き換えられるものでもないのだろう。

それでも相変わらず近所で会う人はにこやかに挨拶をしている人が多いし、スーパーの野菜なども通常の状態に戻っている。

もう少しあたたかくなればバルコニーで日光浴をしながら本を読むこともできる。この時間があるから、これからの季節はやはりできる限りオランダで過ごしたい。

今日もいい天気だ。鳥の声を聞き、身体の声を聞く。そんな風に一日が始まってゆく。2020.3.21 Sat 10:55 Den Haag