591. 歯抜けのスーパー

リビングの前を通るトラムの中に、まばらに人が座っているのが見えた。それを、「いつもより少ない」と感じるのは、「ウイルスの影響がオランダにも出ている」というフィルターが私の意識にかかっているからだろうか。

 

日曜日はいつも静かだし、外を出歩く人も少ない。

いつもと変わらない静けさなはずなのに、そこに微かに不安が混ざる。

 

昨日、普段買い物をしているオーガニックスーパーに足を運ぶと、店内の商品が歯抜けになっていた。物がゴソッとない棚がある。そこに何が置いてあったか記憶が定かではないが、数日間で多くの人が買い求めるイメージがつかない商品も陳列されていたはずだ。

季節の変わり目なので、商品の大幅な入れ替えでもやっているのだろうか。なんてことを考えながら、オレンジジュースを買うために、近くの別のスーパーに向かった。そちらはオーガニックスーパーの倍以上の広さがあり、品揃えや在庫数もかなり豊富なはずのスーパーなのだが、やはり陳列棚が歯抜けになっている。

そこでやっとウイルスの影響だと気づく。

流通が止まっているのだろうか。それとも働く人数や時間を制限しているのだろうか。

トイレットペーパーなどの消耗品・生活必需品だけでなく、そこにないものがあるということは、消費者ではなく、生産や流通・販売側の理由なのだろうか。

昨日、「人が生活を維持するために本当に必要な仕事をするには、現在の3割の労働時間でいい」という話を思い出していたが、いつも当たり前にできていること、見ている景色は、働いている人がいるからこそ実現されているものだということを痛感する。

 

その全てがこれまで通り必要かは分からないが、少なくとも「なくて困る」というものがあるということは分かった。

この状況はいつまで続くのだろうか。

私は気ままな一人暮らしで自分以外のことを気にしなくていいが、家族がいる人たちはきっと本当に大変だろう。

それでも、中庭の梨の木の枝の花は、これまでと変わらずゆっくりと咲いていっている。咲いた花は指折り数えられる数をとうに超えているが、まだ咲いているのは全体の1割にも満たないだろう。

そしてよっぽどのことがない限り、ある日突然一気に満開になるということもないだろう。

世界に目を向けることも大切だが、自分の目の前にある暮らしと自然に目を向け、そこにある美しさを見出す日々を続けていきたい。2020.3.15 Sun 11:00