513. オランダらしすぎる町

リビングの窓から見える景色は、白いフィルターがかかっているようだ。そこには整然とした明るさと、静けさと、寂しさと、少しの緊張感がある。

ああ、今日は風が吹いていないのか。「緊張感」というのは何から感じるのだろうと思ったときに、通りに並ぶ木々の枝に揺れがないことがその要因だと気づく。揺れやゆらぎ、それが私の心にゆるみをもたらせてくれるということ、そして、張りと緩みが今の私の中では対立関係にあるということに気づく。そのうち、張りと緩みが同居することを、緊張感と穏やかさのようなものが同居することを感じられるようになるのだろうか。

年末から年明けにかけて、友人のインタビューの編集やインタビュー公開用のサイトのデザインを続けていた。当初想定したよりもずっと、深みと遊び心のあるものにできたのではないかと思う。日本への帰国直後で忙しい中、そして年始の、家族や親戚との大切な時間を過ごす中で原稿を確認し、写真を準備し、さらに言葉のブラッシュアップを行ってくれた友人には感謝が尽きない。このインタビューを多くの人に届けることで、彼がこれから日本でチャレンジしていこうとしていることの、少しでも後押しになればと願っている。サイトの最終確認をしてもらい、公開をするのが今からとても楽しみだ。(そしてそれは無事公開することができた。「教育武者修行を終えた平山さんに聞く オランダ社会のこと、教育のこと −オランダからのまなざし−」)

そんな中、サイトの調整作業などがひと段落したこともあり昨日はオランダの北の方に足を伸ばした。向かったのはZaanse Schans(ザーンセ・スカンス)というところにあるチョコレートやさん。その店の人と日本でパートナーが出会っており、オランダのスーパーのスーパーでも見かける有名なチョコレートを作っているということで遊びに言ってみようと12月から話していた場所だ。

ハーグ中央駅から出た長距離電車をスキポール空港で乗り換え、まずはZaandam(ザーンダム)という駅に降り立った。駅前にはオランダの伝統的な家を積み重ねたような近代的な建物がドーンと建ち、その周辺に「オランダらしい」建物が並ぶ。オランダらしいが、どこか作り物っぽさがあり、まるで、オランダを模したテーマパークのようだ。そこからバスに10分弱ほど乗り、Zaanse Schansに入る橋の方に向かうと、橋の向こうから大勢の人が歩いて来ているのが見えた。そして橋の上で北の方向に向かってスマートフォンを向け写真撮影をしている。どうやらそちらの方に観光名所的なものがあるようだ。橋の手前の横断歩道を渡り、橋にさしかかると、向かって左手、北の方角にいくつかの風車が並んでいるのが見えた。一定の距離を置きながら川沿いに立ち並ぶ風車。「今まで見た中で一番オランダらしい景色かもしれない!」とZaandamの駅に降り立ったときよりもずっと心が躍った。

風車を見ながら橋を渡ると、その先にはやはりオランダらしいこじんまりとしたかわいい家が転々と並ぶ集落のようなゾーンがある。そこで私は「オランダ村みたい」(長崎ハウステンボスに併設しているオランダを模した小さな町)と思わず口に出していた。「オランダ村みたい」も何も、ここはオランダだ。オランダ村がオランダを模したのであって、オランダがオランダ村を模したわけではない。いたく失礼な話だが、自分がそう思った理由は翌日になって分かった。

建物の一つには、目当てにしていたチョコレートやさんがあり、その他にもオランダで有名なチーズやさんの歴史などを紹介する店舗(そこがそのチーズやさん発祥の地だという)や土産物屋などもある。点在する建物の間を練り歩き、入ってきたのとは逆側の町の入り口のような場所に着くと、そこには大型の観光バスが3,4台停まっていた。その周辺には土産物屋がひときわ多い。どうやらそちらがこの町の入り口だったようだ。町というかむしろ、この一帯がテーマパークのようでもある。

とてもオランダらしいが、オランダらしすぎる…。思い返せばそんな小さな違和感がずっとあった。

そこからもと来たのとは別のバス停まで20分ほど歩き、15分ほどバスを待ち、バスには30分以上揺られていただろう。バスの終着地であるアムステルダム中央駅に着いたことにはバス酔いをしたのか、なんだかとても気分が悪くなっていた。2020.1.5 Sun & 1.6 Mon 11:25 Den Haag