511. 何でもない、特別な日

午後のセッションを終え、軽く食事をして近くのカフェに出かけた。ここのところ、夕方に気分転換にカフェやスーパーに出かけるのが日課となっている。

家の近所にはいくつもの可愛らしいカフェがあるが、中でもよく足を運ぶカフェはすっきりとした店内にほどよくテーブルが配置され、空間に余白がある。そこに今日はいつもより少し賑やかな音楽がかかっていた。それに合わせて、客の一人が口笛を吹き始めた。「ごきげん」が店内に広がって、心地いい。

いつもと同じように生のミントの葉っぱを使ったミントティーを頼み、入り口近くの席に座ってパソコンを広げ作業をしていると、ほどなくして大きな犬を連れた男性が店内に入ってきた。昨日近所ですれ違った、大きな体に顔だけが黒い毛のぬいぐるみのような犬だ。そっくりな毛並みをした二匹だが、片方の方が体が特に大きい。落ち着いた足どりで隣のテーブルの脇に来て、二匹がそれぞれ座り込んだ。

私は動物が好きだ。犬か猫をいつか飼いたいと思っている。旅行に行きづらくなることがネックだが、ヨーロッパ内なら一緒に旅することも難しくはないだろう。中庭で遊ぶ猫たちも、我が家の中まで遊びに来てくれたらいいのにといつも期待を持って眺めている。「こんなに大きな二匹の犬たちと暮らしたらどんな感じなのだろう」そんなことを考えながら寝そべる犬を見ていたら、犬を連れた男性と目が合った。にっこり笑ってくれるのでこちらも笑顔を返す。と、男性が大きな方の犬に話しかけた。どうやら、私の方に行くように行ってくれているらしい。犬はのそりと起き上がりゆっくりとこちらに向かってくる。やってきた犬に実家の犬にするように顔を近づけたら、犬も顔を近づけてきて私の鼻先をペロリと舐めた。頭や首を撫でるとまた犬が私の鼻先を舐める。「今日は何をしていたの?」と話しかけると犬は遠くを見た。

もう一匹の犬が起き上がり、店のスタッフの方に近づいた。いつもいる女性のスタッフは、入り口近くのカウンターの脇から、小さくて四角い何かの入った瓶を取り出し、蓋を開けて手を入れた。近くに来ていた大きい犬も、のそりとそちらに向かう。どうやらここには犬のおやつが常備してあるようだ。女性はそれぞれの犬にお手をさせ、お菓子を口元に差し出した。飼い主の男性と何か言葉を交わす。

飲み物を飲み終わった男性は立ち上がって犬たちとともに入り口に向かう。「チャオ」と声をかけてきたので、「チャオ」と返す。

しばらくカフェで作業を続け、スーパーで買い物をして帰路についた。途中、何度か訪れたことのある小さな薬局のお姉さんが店の窓際にいる姿を見つけた。視線を送ると私に気づき、手を振ってくるので手を振り返す。

これがオランダの日常。何でもない、特別な日。2020.1.3 Fri 18:22 Den Haag