496. アントワープへ
今日はこれからアントワープに行く。決めたのは昨日。今週末どこに行くかということを何気なく話していたときだった。
「アントワープにも行きたいね」
彼が言った。
パートナーは、どんなに人に言われても、自分が気乗りがしないと一向に話に乗ってこないというきらいがある。
これまで何度か、足を運ぶ先として「アントワープもいいね」ということを言っていたが、どうやらそのときは彼の中でピンと来ていなかったようだ。
ハーグからアントワープまではバスで2時間と15分程度、チケットを前もって買えば、片道10ユーロくらいで済むこともある。タリスという、パリに向かう高速電車だと1時間ほどで着く。
私はこれまで2度ほど、バスでアントワープを訪れたことがあった。
そして、その前に一度、やはりバスでの一人旅の途中、アントワープの街中を通ったことがあった。
そのとき見た景色が私の中では今も目に焼き付いている。
黒くて高さのある帽子を被り、耳の横に小さな三つ編みを下げ、丈の長いコートを着た男性たち。
他のヨーロッパの街並みと似ているけれど、そこに流れている空気は何かが違う。
その人たちが「正統派ユダヤ人」と呼ばれる人たちで、アントワープには世界で16ヶ所あるダイヤモンド取引所のうち4つがあるということを後から知った。
なぜアントワープに惹かれるのかはいまだに分からない。
そうか、今日はその感覚を確かめに行くのか。
出発の時刻が近づいている。2019.12.21 Sat 8:34 Den Haag