465. シンタクラースがやってきた!?

今日もすっかり日が暮れた。18時前だが、もうすっかり夜だ。日没時間が早くなることは名残惜しいが、日が短くなり始めた9月頃から、心の準備を始めていたように思う。

今日の気づきについて書き留めて起きたいが、まずは昨日、シンタクラースを見に行ったときの「事の顛末」について書いておきたい。「事の顛末」と言うくらいだから、思いもかけない結果に終わったということだ。

昨日の11時前、隣町のデルフトにシンタクラースがやってくるということを知った私は手早く身支度をして、急いで家を出た。ハーグからデルフトまでは長距離電車に乗れば10分程度、一駅で着く。長距離電車の出るDen Haag HSという駅までは我が家からトラムで15分ほどだ。トラムの停留所に着くと、次のトラムの到着予定時刻まで7分という表示が出ていた。日曜だからか、トラムの駅に人は少なく、停留所のベンチに腰かけて一人トラムを待つ。

やってきたトラムにも、数人人が乗っている程度だった。Den Haag HSに着き、改札口に向かうと、改札口にはピンク色のビニールテープがかけてある。「こちらの改札口は今日は使えないのか」と思って電光掲示板を見上げると、到着予定の電車の表示もない。「もしかして今日はこの駅自体が使えないのか」と思い、念の為、駅の端にあるもう一つの出入り口に向かうと、やはり駅の入り口のにはシャッターが閉まっていた。「せっかくデルフトでお祭りがあっているのに、これでは不便だろう」と思いながら仕方なく乗り換え案内を調べると、駅の前から出ているトラムにはデルフト行きのものもあるということが分かる。22分、長距離電車とそう変わらない時間でデルフトに行けることにホッとし、乗り場の横でトラムを待った。

一つ前のトラムが、ホームの先頭よりもだいぶ手前で停車し、発車した。と、ホームの先頭近くにいた男性が手を挙げた。その位置から乗るつもりだったのだろう。しかし、その男性の横で止まることなくトラムはホームを通り過ぎて行った。男性は両手を広げ、何かを言葉にしている。目が合ったので、私も首をすくめた。こうやって感情をその場で表現していれば鬱屈したものが心に溜まっていくということもないのだろうか。なんてことを想像した。

数分でデルフトに向かうトラムが到着し、空いている座席の中で二人がけの座席を選んで座った。途中で隣に年配の女性が座ろうと近づいてきたので、お尻の下に挟まれないようにとコートの裾を引いたら、何か言葉をかけられた。おそらく、ありがとうと言われたのだろう。

 

ハーグとデルフトの間には、住宅地が続いている。途中、少し大きめの運河(といっても、街中にあるものより、ほんとうに少しだけ大きめという感じだが)を横切るときに、「運河沿いに暮らすのもいいなあ」という考えが浮かんだ。

そしてデルフト中央駅に着くとき、立ち上がろうとすると隣の女性が何か声をかけてきた。「ここで降りるのか」と言っているのだろう。そうだと伝えると、女性は立ち上がって通路を空けてくれた。「オランダの人は電車で乗り合わせた人とも気軽に言葉を交わすけれど、文化や慣習、言葉が違う人たちは、一つ一つのことについて直接コミュニケーションを交わす必要があるんだなあ。そうだよなあ」なんてことを考えながら、トラムを降りた。そして、「ああ、やっぱりデルフトは静かでいいなあ。数少ないが、オランダで知っている街の中で、今のところ一番好きかもしれない」なんてことを考えながら街の中心部に向かう。事前に見てきた情報だと、デルフトには駅からは街の中心にある広場を挟んで反対側に大きめの運河があり、そこをシンタクラースの乗った船が通っていくということだった。広場の近くには週末はマーケットが出ているはずだ。「静かでいいなあ。次に住むならやっぱりデルフトかなあ」そんなことを考えながら、歩き続けるが、途中で方向を見失った。そこでハタと気付いた。「あれ、お祭りがある割には人が少ない…」もしや…と、チェックしていたウェブサイトをもう一度開くと、なんと、お祭りの日付が23日と書いてあるではないか!静かなはずだ。シンタクラースは、前日に既にやってきていたのだ。

「ああ」と、いろいろな情報がつながる。隣町で大きなお祭りがある日に、わざわざ電車の駅を閉鎖することはないだろう。そうだとしても、そうならば、代替交通となるトラムにもっと人が乗っていたはずだろう。街に人が来ていたら、駅前で「静かだなあ」なんて思わないはずだ。人の流れがあれば、街の中心部までの進行方向も見失わないはずだ…。

後で思えば、いろいろな情報が「お祭りは今日ではない」ということを示していたはずなのに、シンタクラースに浮かれていた私はそれに気づかないまま、気付いても何の考察もしないままのこのこと会場だった場所までやってきたのだった。「たまには子ども心を解放するのも大事だよね」と浮かれていた自分が滑稽でもあり、可愛らしくも思えてくる。そそっかしいところはおそらく小さい頃から変わっていないだろう。(そういえば、数年前に大切な中高の同級生の結婚式を1日間違えていたことがあった。そのときは披露宴が始まるときに私がいないことに気付いた参加者の一人の友人が連絡をくれて、たまたま実家からタクシーで行けるところが会場だったこともありどうにか途中から参加することができたのだが、今思い返しても、自分のそそっかしさというか思い込み力の強さには驚かされる。)

お祭りの翌日のためか、週末はいつも賑やかなデルフトの街は、今まで訪れた中で一番静かだった。それでもカフェなどが空いていたのは幸いだ。せっかくだからと、街を少し散歩し、雑貨屋さんの奥にあるカフェに入り、あたたかいスープを飲み、考え事をし、と数時間をそこで過ごし、またトラムでハーグまで帰ってきた。シンタクラースを見ることができなかったのは残念だが、外に出ることで新しいアイディアが湧いてくることを実感し、寒い時期の外出について前向きになれたことは大きな収穫と言ってもいいだろう。2019.11.25 Mon 18:13 Den Haag

466. 変化の実感

昨日の話を書いている間に、窓の外の闇は一段と深くなり、向かいの家々の明かりは、一段と鮮やかになった。今日は珍しく、向かいに並ぶ4軒の家の窓にそれぞれ明かりが灯っている。(我が家は日本式の2階なので、中庭の真ん中にあるガーデンハウスをはさんで向かいの家の1階がよく見える。)

今日は、この3ヶ月間で自分自身の意識の変化が起こったことを実感をした。それはコーチとして参加している法人のプロジェクトに対する自分の感覚をきっかけとしたものだ。この3ヶ月間、私はどちらかというと内向きに自分が大切にしたいことを優先して取り組んできたのだが、その結果、法人のプロジェクトに対する感覚や位置付けに変化が起きていた。それは一旦、自分自身と向き合うことに打ち込んだ結果だと捉えている。「還ってくる場所ができた」という言葉が今は自分の中でしっくり来ている。これまでは還ってくる場所がおぼろげだったので、出かけていくのが怖かったのだ。還ってくる場所がちゃんとあるという実感を持てた今、外に出かけていくことは、知らない星を探検するような楽しみにも思えてくる。自分がそういう時期を過ごすことを許容してくれた人たちや環境に感謝をしたいし、「そういう時期があるのだ」ということを人にも許容したいという想いが生まれてきた。人は日々生まれ変わっているのだろう。そのときそのとき、今この瞬間のその人の感覚や考えに向き合い、その度、その瞬間に自分が感じることを返していきたいということを改めて感じている。記憶でも、思い込みでもなく、まっさらな心で人と向き合っていきたい。

最近つくづく感じるのは、人にはそれぞれのペースがあるということだ。こと、自分が既に知ったこと、できるようになったことについては、今学びや変化のプロセスにある人に対して「何でできないんだろう」と思ってしまうことがある。しかし思い返せば自分にもそういう時期があったし、自分が今取り組んでいることも、他の人から見れば「何でできないんだろう」ということかもしれないのだ。

そういえば、先日参加したインテグラル理論のゼミナールの振り返りの小さな会で、「コーチとしてどんな風にインテグラル理論を活用しているか」という質問を受けた。インテグラル理論を学んでまずとてもよかったと思っているのは「それぞれのペースがある」と思えたことだ。それを待つことができるようになったということに尽きる。あえてそれに加えて大切にするようになったポイントをあげるとすると、ある特定の段階に紐づく視点や体験だけを強化するのではなく、全ての段階の視点や体験を持つことを後押しすることが大切だということだ。そして、例えばビジネスと言った限られた領域だけを扱うことには限界があるということに、ある種、諦めというか、開き直りのようなものを持つようになったということも良かったことだと思っている。自分ができることなど本当に限られていて、クライアント自身やそこにある体験を信じることだということをこの夏の学びは後押しをしてくれている。「活用」という点では、まず自分自身に活用するということにこれからも取り組んでいきたい。ゼミナールの追加講座も開催されるようだが、まずはもう一度講義や補助教材を聞き直し、もう一度学びを深めていきたい。今回の講座は、数年後、数十年後に聞き返してもきっとそのときどき様々な学びがあるだろうという気がしている。

大きくではないが、少しだけ、「一回りした自分」を感じた今日だった。そんな自分で明日からまたどんな景色が見えていくだろうか。雨も心なしか少なくなってきた。冬も悪くないという気がしている。2019.11.25 Mon 18:37 Den Haag