274. まっさらな言葉

東の空に厚い雲が広がっているようで、中庭には日が差し込んでおらず、身体は時間の感覚を失っている。めずらしく、子どもが声を張り上げて泣いている声が聞こえる。さらに耳を澄ますと、車の音、上の階から聞こえる音…。日は差していないが、人々の一日は始まっている。

昨日は滞在していた大学生を見送り、また一人になった。まっさらな目で見た世界、まっさらな言葉。3日間の時間の中で学んだことがたくさんある。自分がいかに実際に経験していないことで頭でっかちになっていたかという反省もある。実際に人と向き合って、ときにたくさん言葉を交わし、ときに沈黙をともにすることの喜びというのも感じた。この時間がまた私の心の中に新たな景色を書き加え、それは目にする景色を新たなものにしてくれるだろう。心のままにやさしい言葉を置いていきたい。それが今のシンプルな想いだ。

今週は日本がお盆のため打ち合わせはないが気づけばセッションは通常通りの予定となっていた。せっかくなので新たなインプットは最小限にして、自分の中から浮かび上がってくる言葉や想いをすくいあげることに向き合いたい。また、少し貯まってきている過去の日記の編集と、そして今後書いていこうと思っている日記とは違う形の記事などについても構想を具体的にしていきたい。今後の活動の方向性を考えてゆくことも取り組みたいことの一つだ。これらのことを、できるだけゆっくり取り組みたいと思うと、1週間という時間もとても短く見えてくる。これは、まとめて取り組むことというより、日々取り組んでいくことにできるといいのだろう。今日はまずはこのあと、寝室のクローゼットに移動していた衣服などを寝室のクローゼットに戻し、掃除をする。そうするとセッションの準備をする時間になっていくだろう。自分のことで頭がいっぱいだと人の話が身体にしっかりと入ってこないままになってしまう。今日は焦らず、場を整えることを通して自分を整え、目の前のことにまっすぐに向き合っていこう。2019.8.13 Tue 8:16 Den Haag

275. 中止になった花火大会

窓の向こうで木々の葉が細かく、ときおり大きく揺れている。画面いっぱいに動く世界が広がっているけれど、その音は聞こえないような感じで無声映画を見ているようだ。カモメの声が聞こえてくるが、それはどこか違う世界にもののように思える。

今日は午前中からセッションが続き、落ち着いたのはこちらの時間で言う夕方になった頃だった。セッションとセッションの間に脳を休ませ、個人的な考え事は極力行わないようにしていたためかニュートラルな状態が保てているように感じる。しかし、早い時間に夕食を必要とし、先ほど少し睡眠をとったので、身体は思った以上にエネルギーを使っていたのかもしれない。今週は本を読むことやインプットを控えることにしているが、そうすると思いの外時間ができるし、脳が静かだ。読書というのは、読んでいる時間以外も考えを巡らせることを後押ししているものなのだろう。そのような本は良い本と呼べるのかもしれないが、だからこそ、過剰摂取をせずに、自分の中で考えが醸造される時間をしっかりと持っていきたい。上滑りする知識ではなく、身体に馴染んだ経験として、意識のもとでも無意識のもとでも、取り込んだものととものありたい。

そういえば先週末はハーグのビーチで開かれる花火大会に行くはずだった。先週末、今週末と2週にわたって各国の花火が上がると思っていた。しかし、先週末の土曜日、22時をすぎても花火の音は聞こえず、日曜日もやはり22時近くなっても花火が上がる気配がなかったので、調べてみると、なんと今年の花火大会は中止になっていた。40万人近くが訪れるようになり、安全対策の面から自治体と主催者が折り合わず今年は中止になったとのことだった。どうやら以前私が見ていた日程の案内は去年のものだったようだ。今のところ来年は開催予定となっているが、それがどうなるかも分からないし、来年ハーグにいるかも分からない。去年偶然見た花火が、貴重なものだったということに、当たり前のように今年も開催されると思っていた花火大会がなくなったことで気づかされた。

冷たい風が吹き込んできたと思ったら、雨が降り始めている。このところ、ハーグでは一日数回雨が降る。もう、夏の雨ではなく、体を冷やす冷たい雨だ。外もどんどんと暗くなっていく。今日は身体が休息を必要としているようだ。何か不自然な力が働いたのではなく、大きな流れの中での必要な休息。静けさが、これからはじまる大きなうねりを予感させる。2019.8.13 Tue 21:15 Den Haag