203. 切れゆく思考の中で

 

21時をすぎ、南の方へと駆け足で向かう雲の向こう側に、ぼやっと広がった飛行機雲が交差している。今日はとても眠い。いつになく眠い。先ほど夕食を終えたときには明らかに瞼が落ちてきて、今はどうにかそれを押し上げている。こんなとき、これまでだったら日記を書くことは諦めて寝ていただろう。こんな状態ではそもそも考える力もない。しかし、だからこそ、頭を使わずに書いたことを明日見直してみようとキーボードの手を動かしている。

今日は朝8時から15時すぎまで打ち合わせとセッションが続き、その後来客があり、さらに日本から来ている知人と食事をしてきた。こう書くだけで、オランダでひっそりと暮らしている私にとってはイレギュラーに盛りだくさんな一日だったことが分かる。昨晩遅くまで仕事をしていたこともあり、有り余るほどのエネルギーがあったわけではなかったが、午後のセッションまで集中力を保つことができたのは消化にエネルギーを使わずに必要な栄養素を摂取できる食の取り組みと、12時過ぎにとった仮眠のおかげだろう。しかしやはり今、久しぶりにボリュームのある外食をしたこともあり、エネルギーはまさに消化に使われている。食事をしたのにエネルギーを使うというのも不思議な話に聞こえるけれど、やはり消化に使うエネルギーというのは大きいのだと思う。

記憶を辿り思考をすることは難しそうなので、書斎の窓から見える景色を書いてみる。空は、勿忘草(わすれなぐさ)色よりも少し明るい。動いていく雲の一部は西に沈む太陽の光を受けて蜂蜜色を含んでいる。腕を伸ばしてきた庭の蔓は薄萌黄(うすもえぎ)。蔓の先にぴょんと出た髭のような部分には象牙色の小さな花がついている。庭の隅に躑躅(つつじ)色の花が付いている。躑躅というのは「てきちょく」とも読むということを変換の途中で知った。「てきちょく」というのは二、三歩行っては止まること、進まないことを表すが、つつじの花はその美しさに人が足を止めることからこの漢字があてられたという説もあるようだ。ぼんやりとした頭だが、新しい色の名前とその意味を知ることができた。いつか見た景色が今日につながって、今日見た景色がいつかの未来につながっていく。そんなことを考えたという自分がいることを確認したが、いよいよ睡魔に勝てず眠りにつくことにする。2019.7.8 Mon 21:35 Den Haag