105. 出発の朝の小さなメモ
空はすっかり明るくなってるが、青みは少なく、西から東への白へのグラデーションが続いている。身支度と荷物の確認を終えて、あと30分ほどで家を出る。急ぎでやることがありそれに少し焦りの意識が向いているが、出発前に少しでも日記を書き留めておきたい。昨晩は結局のところなかなか寝付けず、いつもと同じくらいの時間に眠りについたのだと思う。
目覚める前に見ていた夢は、目覚めた直後には概要を覚えていて、そこから細かい部分も思い出せそうな気がしたが、今、そこに意識を向けようとすると、逃げるように遠のいて行く。ただ、あるものが思い出せないというのではなく。もう少しで手の届く距離にありそうなものが、手を伸ばすとどんどんと遠ざかって行くような感じだ。
言葉にするほど内容を思い出しせないのがもどかしいが、うっすらと覚えているのは中高のときの同級生の女性数人が登場したことだ。日記をつけ始めてわかったのだが、夢に登場する女性の多くは中高の同級生を模していることが多い。それは私が中高一貫の学校に通い、その後、それぞれが結婚し、家庭を持つ三十歳くらいまで交流があったからかもしれない。このあたりはまた書く機会があるだろう。
いつもより随分と早い時間に起きるために今日は目覚ましを鳴らしたが、目覚ましの音で、心臓を中心として身体全体が縮こまったような感覚が今も残っている。
4年前、会社員を辞めた私がまずやったことは、目覚ましをかけるのをやめたことだった。それは出社時刻というものにとらわれない自由な生き方を象徴していたわけではなく、それまで目覚ましの音でびっくりして目を覚ますことが心臓を中心として身体全体に不快感を与え、寿命が縮まるような感じがしていて、その負担をなくしたいと思っていたからだ。ヨーロッパに来て、冬場は朝暗いので日本との打ち合わせに参加するために目覚ましをならさなければならないこともあるが、目覚まし無しで起きることで身体への負荷が少なく一日を始められるようになっていると思う。
一羽のカモメが書斎の窓の外をぐるりと旋回していった。そろそろ出発の時刻だ。2019.5.16 6:19 Den Haag
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