南東の空、ちょうどはす向かいの家の上に括り付けられた黒いカモメの形をした凧の向こうから太陽の光が降り注いでくる。窓を開けるとひんやりとした風が吹き込んでくるけれど、窓ガラス越しの光が充満した小さな書斎は温室のようにあたたかい。庭の木の枝に咲いていた白い花はいくつかの塊を残してほとんど散ってしまった。もう一つの庭の木には黄緑色の楓のような形をした葉が茂っている。斜め下の保育所から珍しく子どもの泣き声が聞こえる。階下からはオーナーのヤンさんが聴いているのであろうクラシック音楽が聞こえてくる。

静かな日常の中、私の心の中にはざわざわしたものがある。胸骨の中、心臓と肝臓の間くらいだろうか。気温というのは思考と関連しているのだろうか。少なくとも身体の中にある「気」は、気温の上昇とともに少し上のほうに上がってきて、いわば浮き足立った状態になっている気がする。オランダに帰ってきてヨガをしたくなったのはそんな気を、落ち着けて地に足をつけた感覚を保ちたいというのもあったのだろうか。日本を出るまではアジアの暖かい国で暮らしたいと思っていたけれど、寒さがあることが、外的環境からの刺激をほどよく遮断し、思考を深めるのにいい影響を与えているように思う。冬場はあれだけ春が待ち遠しかったのに、少しあたたかくなってくるとこれだから、贅沢なものだ。

今日はいくつか考えたいことに取り組みながら、少しずつ日記を書き留めていってみようと思う。
2019.04.10 10:23 Den Haag