このところ、ハーグは雨の降る日が続いている。お日様が出ていない朝は、空が暗いだけでなく、鳥の声も少ない。トラムや車の音もいつもより小さく聞こえる。前回日本に行ったときに森下典子さんの『日日是好日 ー「お茶」が教えてくれた15の幸せ』を観た。その中に出てくる「雨聴」という言葉、そして、季節によって雨の音が違って聞こえるという話が印象的だった。春がもう少しで訪れる、そんなハーグの雨の音はどんな音なんだろうと思った。この時期の雨は、冬に比べて少し優しい気がする。それは少しずつ木々に新しい芽が芽吹いて、小さな枝も増えているからかもしれない。木々にあたって落ちた水滴はふわりと地面に足をおろす。

寝室の外の大きな木に目をやると、やはり枝の先に小さな薄く色づいた芽のようなものがついてきている。「春になると、この木々に白い花がついて、それが舞って、とても美しいんだよ」階下に住んでいるこの部屋のオーナーが2ヶ月ほどまえ、雪が積もった中庭を眺めながらそう言ったことを思い出した。新しい場所に住んで1年目は、気温の変化でしか季節の変化を感じることができないというのが海外に来て気づいたことの一つだ。慣れしたしんだ場所では匂いや音、花や木々の変化で季節の終わりを感じ取っていたのだ。今年はきっと、この庭の白い花は突然に咲くのだろう。そして来年は、その兆しから感じることができるようになるのだろう。2019.03.13 Den Haag